最速リスニング上達術!ディクテーションのすすめ
「とにかく英語をシャワーのように浴びれば、いつかは話せるようになる!」
こんな内容の英語教材のCMが、近年盛んに放映されています。
果たして本当に「聞くだけ」でリスニング力は向上するのでしょうか。
確かにリスニングが苦手な日本人は多いですし、たくさんの量の英語を聞けばリスニング力が向上するように感じるのもまた事実です。
しかし、リスニングは本来受動的な行為ではなく「自ら英語を理解する」能動的な行為です。
つまり、リスニング能力を効率的に向上させるためには、単に英語を聞き流すだけではなく、学術的根拠のある学習法を学ぶことが非常に重要であると言えます。
そこで今回は、2010年に発表された東洋大学国際地域学部教授の喜田慶文氏の論文などを根拠としながら、「能動的に英語を聞く」方法のひとつとして「ディクテーション」の活用法をご紹介していきたいと思います。
そもそもリスニングが苦手な原因とは?
「英語を聴くのが苦手すぎて、リスニング対策といっても何から手をつけていいのかわからない・・・」
リスニングが苦手だと感じている人からは、こんな悲鳴が聞こえてきそうです。
しかし、「苦手」には必ず原因が存在します。その原因を知ることが、苦手を克服する第一歩です。
そこで、ここではリスニングが苦手であると感じる原因について、第二言語習得論の観点から考えていきたいと思います。
まず、1999年に発表された筑波大学教授のAkiyo Hirai氏の論文によると、「リスニングが苦手な場合の問題点」は以下の三点です(なお、今回はわかりやすさの観点から表現を一部改変・削除した場合があることをあらかじめ断っておきます)。
- 内容を理解するために必要な語彙や文法の知識がない。
- 聴こえてくる音声のスピードについていけない。
- 文字を見たらわかる語でも、音声で聞いた場合にその語と意味を結びつけられない。
(参考訳:杉浦他 2002:pp105-106)
リスニングが苦手な人にとってはどれも心当たりがある内容だと思いますが、さらに杉浦他(2002)は、上記の条件③がリスニング特有の問題であることを指摘しています。
つまり、「聞こえた音声と、文字を頭の中で結びつけることができない」ことがリスニング特有の問題であると言えます。
また、2010年に発表された、東洋大学の喜田慶文氏の論文(p38)によれば、そもそも英語が苦手な人は、意識や集中力をどうやって英語の音声に向けていいのかわからないという問題点を抱えていることも指摘されています。
ここまでの内容をまとめると、リスニングができない人の問題点は
・耳で聞いた音声と、目で見た英単語を頭の中で結びつけることができない
・自分の意識や集中力を英語に向ける方法がわからない
という2点に集約されると言えます。
ディクテーションの効用
ここまでリスニングができない原因について述べてきましたが、上述した2つの論文によれば、ディクテーションを行うことによってそれらの問題点を解決することができるといいます。
つまり、ディクテーションを行うと、
・耳で聞いた音声と、目で見た英単語を頭の中で結びつける能力
・自分の意識や集中力を自然と英語の音声に向ける能力
以上のような能力が身につき、結果リスニング力が向上するというわけです。
ところで、この「ディクテーション」という言葉自体は、中学校や高校の英語の授業などで耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。
日本最大級の辞典である『日本国語大辞典(Japan Knowledge版)』の「dictation(ディクテーション)」の項を参照すると、
「読みあげられた外国語の文章や単語の書き取り」
という意味が記載されています。
例えば、文章の何箇所かが空欄になったプリントが配られ、音声を聞きながらその部分を書く練習が典型的なディクテーション練習のひとつです。
このような練習を地道に積み重ねていくことで、英語の苦手な人もリスニング力を向上させることができます。
おすすめのディクテーションの教材
では、具体的にどのような教材を使えば効果的にディクテーションを実践できるのでしょうか。
ここでは、おすすめのディクテーションの教材を2点(書籍1点、アプリ1点)紹介したいと思います。
①藤澤 慶已(2017)『聞いて書きとる英語リスニング300問』DHC(書籍)
あなたは、「I can」と「I can’t」、二つの音声を聞いたときに「絶対に区別できる!」と自信を持って言えますか?
こういった問題は一見すると簡単そうに感じられますが、実際に聞いてみると案外区別できないものです。
この本は、
・日本人が聞いて区別しにくい音声を、5つのパターンから分析
・300問の問題演習を記載
という特徴があり、リスニングに自信がない方でも問題演習を通じて着実に力をつけていくことのできる内容になっています。
初級、中級、上級と難易度別になっていますので、この本を使って日々鍛錬すればリスニング力が向上すること間違いなしです!
②「TEDICT」(アプリ)
「TED」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
「TED」とは、科学技術から人種差別に関する事柄に至るまで、幅広いテーマの講演会を主催しているアメリカの非営利団体のことを指します。
TEDのプレゼンテーションは
・内容が濃く、プレゼンテーションを聞くことによって自分の知識を深められる
・その分野の専門家がプレゼンテーションしているため、信頼性が高い
・テーマが豊富なので、飽きがこない
以上のような点で魅力的ですが、その生のプレゼンテーションに基づいたディクテーションを行うことができるアプリ「TEDICT」が登場しました。
「TEDICT」には主に以下のような機能があります。
①プレゼンテーションを字幕付きで見る
②プレゼンテーションをディクテーションする
また、ディクテーションには「EASYモード」もありますので、リスニングに自信がない方でも少しずつステップアップしてディクテーションに取り組んでいくことができます。
360円と有料にはなってしまいますが、これだけ豊富なコンテンツを使用できるならお買い得と言っていいでしょう。
最新の知識を得ながら英語を習得できるこのアプリは、忙しいビジネスマンにもぴったりの製品であると言えます。
まとめ
ここまで、リスニングが苦手な原因とその解消法、そしておすすめの学習参考書とアプリをご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
今回の内容をまとめると、
・英語学習が苦手な原因のひとつは、耳で聞いた音声と目で見た英単語を頭の中で結びつけられないこと
・ディクテーションは、それを解消する特効薬である
・独学で勉強するなら、『聞いて書きとる英語リスニング300問』「TEDICT」がおすすめ
以上3点になります。
冒頭でもお伝えしましたが、リスニングに限らず、何かを「苦手だ」と感じた際、そこには必ず原因が存在します。
英語力を総合的に向上させていくためには、まずは「現在の自分の弱点、および課題を知ること」が非常に重要です。
ぜひ皆さんも、苦手な分野に直面した際には、「自分がこれを苦手とする理由は何なのか」という点について考えてみてくださいね。
参考文献
・喜田慶文(2010)「英語リスニング指導法としてディクテーションの有効性に関する一考察–ディクテーションはTOEFL Listening学習に有効か」
『観光学研究』9, pp37-46,東洋大学国際地域学部
・杉浦正利・竹内彰子・馬場今日子(2002)『言語文化論集』23(2), pp105-121,名古屋大学
・Hirai, A. (1999). The relationship between listening and reading rates of Japanese EFL learners. The Modern Language Journal, 83 (3), 367-384.

学びのブログ編集部
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