リスニングに絶大な効果!シャドーイングの利点と学習方法
英語初学者の難関のひとつが、「話す」「書く」「聞く」「読む」という4技能のうちの「聞く」技能です。
中級以上の方でも、
「英語が流れ始めると、緊張してしまって内容が全然頭に入ってこない・・・」
「リスニングの効果的な勉強方法がいまいちよくわからない・・・」
というお悩みをお持ちの方はいらっしゃると思います。
そこで、今回は関西学院大学教授の門田修平氏の研究などで学術的に効果が立証されており、第二言語習得論の世界においてもしばしば言及される「シャドーイング」を用いたリスニングの無料の学習法についてご紹介します。
シャドーイングとは?
そもそも、「シャドーイング」という言葉を耳にしたことがあっても、はっきりとした意味をご存知ない方も多くいらっしゃるかと思います。
ここでは「シャドーイング」とは具体的にどのような行為を指すのかについて、わかりやすく解説していきます。
例えば、1997年に発表された玉井健の研究論文を参照してみましょう。
ここでは、シャドーイングについて
「聞こえてくるスピーチに対してほぼ同時にあるいは一定の間をおいてそのスピーチと同じ発話を口頭で再生する行為、又は聴解訓練法」(玉井1997:106)
という定義がなされています。
つまり、簡単に言えば、「発話された音声を聴きながら、聴こえてきた音声を追いかけるようにして自分で発音する行為」がシャドーイングであると言えます。
一度音声を聞き終わってからその文を反復する「リピート」とは異なり、文が終わる前に、聞こえてきた音を即座に発音するのが「シャドーイング」の特徴です。
シャドーイングにはどのような効果がある?
ここ数十年の間、シャドーイングはリスニング強化の手法として第二言語習得論の世界で大きな注目を集めてきました。
そこで、この項目では
1.どうして今、「シャドーイング」なのか?
2.シャドーイングがリスニング力向上につながる科学的根拠
という2項目についてご紹介していきたいと思います。
1.どうして今、「シャドーイング」なのか?
そもそも、日本の英語教育の大きな問題点として「コミュニケーション能力の向上」が叫ばれていることはよくご存知だと思います。
というのは、日本の従来の英語教育においては圧倒的に「読む時間」「書く時間」勉強が多く、「話す」「聞く」ことについては比較的軽んじられる傾向があったからです。
政府としてもそのような状況を重く受け止め、文部科学省は2020年のオリンピック開催を視野に入れた上で、
・これからは「外国語を用いたコミュニケーションを行う機会が格段に増えることが想定」されること
・学校教育において、「特にコミュニケーション能力の育成について改善を加速化」すべきこと
について述べています(「今後の英語教育の改善・充実方策について 報告~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~」)。
そのような背景の下、「聞いて話す」練習が同時に行えるシャドーイングはコミュニケーション能力向上に極めて有効な勉強法として注目を集めてきました。
2.シャドーイングがリスニング力向上につながる学術的根拠
とは言え、やはり明確な根拠がなければ「シャドーイングが英語の勉強に役に立つ」と断言することはできません。
特にビジネスマンの方など、効率的な勉強法をお探しの方にとってシャドーイングの有効性を担保する材料は重要だと思います。
シャドーイングに関する書籍や論文は多数存在しますが、今回は2007年に応用言語学者・門田修平が出版した本からシャドーイングの効用とその学術的根拠を引用してご紹介したいと思います。
門田(2007:35)は、シャドーイングのふたつの効用として以下の2点を挙げています。
・音声知覚の自動化機能
・新規学習項目の内在化機能
まず、1点目の「音声知覚の自動化機能」についてです。
これを簡単に言い換えれば
「リスニングに慣れていない学習者は、英語を聞くと頭の中でその音声と自分の中で記憶している似た音声の単語を探し出す、という形で音声を処理している。しかし、シャドーイングをすることにより、ネイティブの音声と単語とを、自分の中でダイレクトに結びつけることができるようになる」
ということになります。
カタカナ英語に慣れている私たち日本人がリスニング能力を向上させるためには、はじめに「ネイティブがどのような発音をしているか」という知識を徹底的に体に叩き込む必要があります。
シャドーイングの効用のひとつは、このような「英語らしい」発音を学習し、いちいち考えずに自動的にその発音を知覚することができるようにすることです。
次に、2点目の「新規学習項目の内在化機能」を簡単に言い換えると、「シャドーイングをすることによって、新しく覚えた内容が定着しやすくなる」ということになります。
みなさんは、日常の中で新しい英単語や文章を聞いた際、心の中でぶつぶつとそれを繰り返してみたことはないでしょうか。
もちろん心の中でつぶやくのもひとつのトレーニングなのですが、シャドーイングではそれが音声という形ではっきりと表れるため、新しい英単語や構文などを長期記憶に定着させる効用があると言われています。
以上の理由から、シャドーイングには
・ネイティブの英語を聴く能力が向上する
・新しい英単語や構文を長期記憶として保持できる
というメリットがあると言えます。
実践!シャドーイングの活用方法
ところで、ここまで読んできた方の中には
「英文を聞いてシャドーイングすれば効果があることはわかった。でも、英文の意味はいつ調べればいいの?」
と疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この点に関しては、上述した門田(2007:227-228)においても言及されているのですが、「英文の意味理解」(シャドーイングでは練習できない部分)と「英文を聴く練習」「長期記憶として保持する練習」(シャドーイングで練習できる部分)は全く別のプロセスであると言えます。
そこで、以下の順序で英語学習を行うことによってリスニングに関する勉強を効率的に行うことができると考えられます。
・まずは一度文章を読んでわからない単語や文法を調べ、大まかな意味を理解する
(「英文の意味理解のプロセス」)
・次にシャドーイングを行い、リスニング力を鍛えつつ、新しい単語や文法を長期記憶として保持できるようにする
(「英文を聴く練習」「長期記憶として保持する練習」)
また、「英語を無料で学習したい」というニーズは大きいと思いますが、このプロセスさえ行えば有料の教材を使わずとも無料でリスニング力を向上させることができます。
例えば、「Children’s Storybooks Online」(http://www.magickeys.com/books/)というサイトには、子供向けから大人向けまで、様々な英語のストーリーが無料で掲載されています。
朗読の音声が付いているものもあるため、シャドーイングにはうってつけのサイトであると言えるでしょう。
インターネット上には様々な無料コンテンツがあるので、ぜひご自分でも優良な無料サイトを探してみてくださいね。
まとめ
ここまで、シャドーイングの定義から無料の勉強法まで、様々な内容を紹介してきました。
とはいえ、ここまで英語学習についてご紹介してきましたが、人間誰しもつい『これをやればできるようになる!』という方法が欲しくなるものです。
ただ、現実はなかなかそうはいきません。
と言うのは、こうした方法はあくまで「取り組み方」「対処療法」を提供しているに過ぎないからです。
咳が出たら咳止め薬を飲み、頭が痛かったら頭痛薬を飲む、といったことを行っているだけで、咳や頭痛の原因を突き止めて適切な治療を行っているわけではありません。
では、「英語学習において最も大切なこと」とはなんでしょうか。
それは、ご自分の英語の課題はどのような点にあるのかを常に意識し、次はどのようなステップを踏めばレベルアップするのかというベストな方法を模索することです。
まずはご自身の課題がどこにあるのか、きちんと見極めるようにしましょう!
参考文献・URL
・門田修平(2007)『シャドーイングと音読の科学』コスモピア株式会社
・玉井健(1997)「シャドーイングの効果と聴解プロセスにおける位置づけ」『時事英語学研究』36,pp105-116,一般社団法人 日本メディア英語学会
・文部科学省公式サイト(最終閲覧日:2019年3月14日)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/102/houkoku/attach/1352464.htm

学びのブログ編集部
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