「自己責任」の意味を考える

 

「●●に陥ったのはあなたの自己責任だ」という声をよく耳にするようになりました。たとえば「あなたが貧乏なのは自己責任だ」という意見があります。

たばこなどの健康問題や、ワーキングプアの問題、ジャーナリストが退避勧告を出した国に訪れ拘束された事件等々で、自己責任を問う意見が時折見られます。

では、この「自己責任」とは一体何なのでしょうか。ワーキングプアや子供の貧困の問題を例に、自己責任の問題を再考してみましょう。

 

ワーキングプアに対する自己責任論

 

自己責任という言葉は元来、広辞苑に掲載されていませんでした。この言葉が登場したのは、2004年に発生したイラク日本人人質事件以降だといわれています。

goo辞書には、「自分の行動の責任は自分にあること」と意味が記載されています。

ともかく、いろいろなシーンで自己責任という言葉が使用されるようになりました。

 

一例として、「Aさんが貧乏なのは自己責任だ」という主張を考えてみましょう。

勉強する自由があったにもかかわらず、大学に行かずに遊ぶという選択をした、あるいはフリーターを選択した、その結果貧乏になってしまったというのです。

 

一見この意見は正しいように思えますが、もう少し掘り下げてみましょう。

 

「Aさんが貧乏なのは自己責任だ」というのは、Aさんが貧乏に至るまでの行動に対して、Aさんの責任を問うということです。

たとえばAさんが借金をしたから生活に困窮したのかもしれませんし、Aさんが就職活動に失敗し正社員になれなかったのが原因なのかもしれません。

 

いずれにせよ、Aさんがワーキングプアに陥るまでの行動を遡らないと、自己責任を問えるかどうか判断できないわけです。

つまり、Aさんが貧乏であるという「結果」に対してではなく、Aさんがワーキングプアに陥るまでの「行為」に対して、「Aさんが貧乏なのは自己責任だ」と主張されているのです。

 

この点を踏まえた上で、本当にAさんの自己責任を問えるのかについて、いくつかの状況から考察してみましょう。

 

自己責任が問えそうなケース

 

仮にAさんは両親がともに働く中流家庭に生まれたとします。Aさんは大学に通えるなど十分な教育を受け、その結果Aさんはものごとの判断力を十分持ち合わせている、あるいは身に着けたとしましょう。

にもかかわらず、大学で勉強をせずに遊ぶことを選択し、その結果就職できずにワーキングプアになったとすれば、どのように思われるでしょう。Aさんがワーキングプアになったのは自己責任だと感じる人がいるのではないでしょうか。

 

逆に言うと、ワーキングプアにならないためには、円滑に就職できるよう大学で勉強することが必要になります。そのような判断を下せる条件をAさんがもちあわせていたとも言えるのではないでしょうか。

 

子供の貧困に自己責任を問えるのか

 

今度は、貧困家庭に生まれた20歳未満の子供を想定しましょう。このような子供に対し、貧困の自己責任を問えるでしょうか?

親は子供に教育を受けさせる義務はあります。しかし先述のAさんのような環境下に、どの子供も置かれているとは限りません。きちんとした教育が受けられる学校であればあるほど、学費は正比例で上げる傾向ではないでしょうか。

ところが、親の所得格差はいやが上にも存在します。親の所得と学歴とは比例するといいますが、貧しい家庭に育った子供は、十分な教育を受けることができません。そのため、大学に行き就職するというルートを歩むためには、平均以上の努力が必要になるでしょう。

 

つまり、貧困に至るまでに子供に与えられた行動の選択肢は、非常に限られていることになります。

限られた家庭環境の中、アルバイトでお金を稼ぎながら勉強するという選択肢を取る子供もいるでしょう。中には、能力以上の努力が必要だったり、大学に入学するための学費を賄えなかったりという状況から、仕方なくアルバイトや非正規の社員として働く道を選ぶ子供もいるかもしれません。

このような場合、子供の選択した行動に対し自己責任を問えるでしょうか。

繰り返しますが、自己責任を問うのは行動に対してであって、結果に対してではありません。

 

この場合、子供の自己責任を問う余地はAさんよりも少ないでしょう。

代わりに、どのような子供も円滑に就職できるための機会を与えきれなかった社会に責任があるように思えます。

 

まとめ

 

ワーキングプアを例に取って、自己責任の問題を考えてみました。

「自己責任論」のすべてが間違っているとまでは主張できません。しかし自己責任を追及されている該当者は、さまざまな社会条件のもとで制約されていて、問題を回避するような判断を行なえることすら困難な場合があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

 

「自己責任」を唱えるときには、個人の置かれている立場を考慮し、再考してみてはいかがでしょうか。

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「●●に陥ったのはあなたの自己責任だ」という声をよく耳にするようになりました。たとえば「あなたが貧乏なのは自己責任だ」という意見があります。 たばこなどの健康問題や、ワーキングプアの問題、ジャーナリストが退避勧告を出した国に訪れ拘束された事件等々で、自己責任を問う意見が時折見られます。 では、この「自己責任」とは一体何なのでしょうか。ワーキングプアや子供の貧困の問題を例に、自己責任の問題を再考してみましょう。
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